天使ママのお部屋

体外受精、双子妊娠、22週流産、癒着胎盤を乗り越えてベビ待ち中のナースのブログ

看護師が悩むモンスターペイシェントの実態とは

こんばんは。天使ママのお部屋へようこそ。

私は看護師歴13年目に突入しております。

今は施設での勤務ですが、去年までは総合病院で副看護師長として勤務しておりました。

長年病院で働いているといろんな患者さんやご家族と出会います。

その中で、巷でも噂になっているようなモンスターペイシェントと言われるような困った患者さんやご家族に出会うことも多々あるわけです。

今日はそんな困ったさんたちのことを少しご紹介したいと思います。

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 本日のメニュー

 

モンスターペイシェントってなに?

学校にすぐクレームを言って来る保護者をモンスターペアレントと言いますが、その患者バージョンということです。

近年医療業界は患者さんを患者様と呼び、医療はサービス業であると謳い、病気は治るのが当たり前と思われるようになってきました。

こういった傾向が生み出したのがモンスターペイシェントです。

 

インターネット上にある噂レベルの知識ですぐに医療ミスを疑い、患者はお客なんだ、金を払っているんだからこれくらいのことはしろと行き過ぎた要望をされる方も中にはいらっしゃいます。こうしたモンスターたちと日々戦っているのは看護師です。

経験上、そのターゲットにされるのは圧倒的に看護師が多いのです。

その理由として一番は患者さんに一番近い所にいる存在であるからということと、若い女性が多いということでしょう。

総合病院でありながら人手不足で時々病棟の看護師が外来に手伝いに駆り出されることがあり、私も外来の受付をやっていた時期があります。その時感じたことは、受付に居る私には「おい!いつまで待たせるんんだ!」と大声で怒鳴った人もひとたび診察室に入ると「いやー、先生どうもどうも。」と人格が変わります。さっきの勢いはどうしたよ。とツッコみたくなりますが、看護師に怒鳴った人ほど医師にはへこへこします。

 

自分より下だと格付けした者に対しては高圧的態度を取り、医師のような社会的に認められた地位を持ち、且つそれなりに年を取った男性に対しては腰が低くなる。これがモンスターたちの一つの特色でもあります。

人としてのモラルがちゃんとしている人はどんな場面においてもモンスターに変身することなどないのです。

 

説明と同意の意味

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一昔前の医療の現場は先生にお任せするので何とかお願いしますねといういわゆる「まな板の上の鯉」状態で医療を受ける患者がほとんどで、治療に関して説明を聞いたところで素人には分からないからと最初からあきらめている人が多かったように思います。

しかし、現代は違います。インターネットの普及によりいろんな知識が簡単に手に入り、患者も医療のサービスを選択するという時代になったんです。

そこで大切になったのが「説明と同意」です。

医師はキチンと患者に説明をする義務があり、患者は説明を聞いて理解したうえで同意をするというシステムです。

このシステムはモンスター撃退の一つの手段でもあります。

モンスターたちを暴れさせないため、何かあったときには同意書を見せあなたは同意の上でこの治療を受けたんですよと言い聞かせるためのアイテムにもなるんです。

今の医療現場は少なからず、訴えられたらということを念頭に置いた対応をしています。現状では医療訴訟の件数はピークを越え近年では横ばい傾向ではありますがそれでも年間で800件の新しい提訴がおこっているそうです。

 

こうしたトラブルを回避すべく、同意書というある意味印籠ともなりえる書類を作ることに病院側も躍起になっています。

家族などの身寄りもなく、字を書こうにも手が震えてしまうくらいご高齢な患者さんに対してでも読めるか読めないかもわからないような字を書かせ、なんとしてでも同意書を取る。逆に言えば同意書を取らずして検査も治療も一切致しません。というくらいのスタンスの病院が増えました。大きな病院であればあるほど徹底しています。

 

モンスター撃退のためとはいえ、何とも言えない虚しさを感じます。震える手で一生懸命サインをしてくださる患者さんを見て、こんな同意書にどれだけの意味があるんだろうと私は違和感を感じていました。

本来の「説明と同意」の意味とは違うものになりつつあるのではないだろうかと思うのです。

 

私が遭遇したモンスター

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いろんな患者さんがいて、10年以上も看護師やってるといろんなケースに遭遇します。とにかく同室者と喧嘩しまくる患者さん、奥さんが帰ると途端にエロじじいと化す患者さん、飲酒して酔っぱらった状態で真夜中に面会に来る家族、自分の常識をはるかに超えるような人たちはたくさんいます。

ベースに認知症があったりして認識が出来ないために暴れたり看護師に暴言を吐いてきたりする人のことは全然我慢できます。それでも殴られたりつねられたり「鬼!悪魔!殺される‐!」なんて言われたりするのは嫌ですけどね。

まぁでもそれは本来のその人ではないし、認知症でうまく対処できないからこそ苦しいのは患者さんであるし理解できます。

問題は、そういう疾患がないにも関わらず、そうしたことをしてくる人です。

 

初めから高圧的な態度の家族

私が出会った人の中で一番困った家族がいます。

入院の時から前の病院とトラブルを起こしてどうしてもこっちの病院で診てほしい、しかも個室じゃなきゃ嫌だという注文付き。

来る前から私たちの気持ちは超絶ブルーです。

ご本人はとてもお上品そうな奥さま。とにかく「私は主人がいないと何もできないの。」と言う人で、なにもかもご主人任せ。問題なのがそのご主人。

とにかく高圧的で命令口調。「金ならいくらでも出す」と露骨な言い方すらします。既に病状はかなり厳しいものでした。治すというのはもう不可能な状況で緩和や延命といった趣旨がメインと考えざるを得ない進行状況です。

それでもご主人はお金さえ出せば治せるだろうと考えていたと思われます。

 

急変で駆け付け、早速の怒鳴り声

そして病状が悪化したために、病院に来てもらうよう電話連絡をしたときのことです。すぐに駆け付けたご主人に対し、看護師が「医師から説明をしますのでお部屋でお待ちください。」と伝えただけですがその態度が気に食わないと病院に来た早々に怒り出しました。

「責任者を出せ」と大声でナースステーション前で怒鳴り散らしていました。

そういう日に限って病棟責任者である師長さんはお休みで師長代行していたのが私。

ナースステーションの奥にある師長さんの机に座っていた私を看護師が呼びに来ましたが言われなくても良ーく聞こえているよーって感じです。

 

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第1ラウンド開始!

私が出ていくと「なんだお前は!責任者を出せと言ったんだ!」と私に持っていた傘の先で指さします。もうこの時点で相当に失礼な態度です。

私は見た目が小さいし童顔だし、30歳越えても新人さんかい?なんて間違われる見た目をしているんで仕方ないっちゃぁ仕方ないのですが、なので全身全霊の気迫を出して「私が責任者です。」とお答えしました。

一瞬「え?」って顔をされましたが、「あぁ、そうか。」と少しだけトーンダウン。「どうなさいましたか?」と私が問うと、また一気にヒートアップし今度はその傘を対応した看護師に向けて振り回し「こいつが生意気な態度をとったんだ!」とまた大声で叫びだしました。

こういう時、こっちが怯んだら終わりです。そしてこういう人は自分より強いと思った人に対しては途端に弱くなります。だから大事なことはこの人に自分の方が強いということを見せることです。

「わかりました。お話を伺いますが、その前にその傘を振り回すような危険な行為をされるようでしたら人を呼んでからお話を伺いますがよろしいでしょうか?」と一歩前に出ながら伝えます。

慌てて傘を下すのを見て、よしいけると確信。

 

別室にて第2ラウンド

別室に連れて行って個室で話をしました。

まず、環境を変えること、そして椅子に座らせることでも気持ちを切り替えたり落ち着かせたりすることが出来ます。

話をするうちに最初は対応した看護師の目つきが悪かったとかそんなことを言っていたかと思ったらどんどん話はいろんな方向に飛び、前の病院の文句まで飛び出し、自分の感情が高まると声も大きくなりそこに私が相槌をうったりするとまたはたと我に返り、声の大きさも元に戻るの繰り返しでした。

奥さまを失ってしまうかもしれないという不安感からそうした態度や文句になってしまうんだろうなということは理解できましたが、それにしたってこっちにとっては迷惑極まりないことです。

 

息子さんがやってきて、一緒に話を聞いてもらい感情が高まり声が大きくなるたび、息子さんがなだめて下さっていましたが息子さんも弱気な感じの人でした。

医師が来て病状説明をし、一旦は落ち着きを取り戻し病室に行きました。

 

再びの急変

しかしそこで2度目の病状変化がありました。

御家族の希望はフルコースです。フルコースとは蘇生処置でやれることは人工呼吸器も心臓マッサージでもなんでも全部やってほしいということです。病状は末期なので通常であれば苦しむだけだからと説得するところなんですが、通用しません。

蘇生処置をする時には必ずご家族には病室の外でいったん待機してもらいます。

息子さんに促され病室の外に出るには出ましたが、明らかに納得していない雰囲気でした。でも今はそれどころではありません。出来ることは全部やってほしいというのであれば全力でやれることをやります。

 

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まさかの第3ラウンド

医師と看護師が数名で処置に当たり、私は医師から鎮静剤の薬を取ってくるよう指示を受け病室の扉を開けてびっくり。目の前にご主人が立っていました。

そしてそのまま病室に入り「お前たちはいったい何をしているんだ!家族に何の説明もしないで何をするつもりなんだ!」と怒鳴り散らしながら患者さんの方へ近づこうとします。

必死にそれを押しとどめ、「今すぐに説明するのは無理です。今全力で処置をしています。」となだめながら少しずつ部屋の外へと押し返していきます。その隙にもう一人の看護師が横をすっと通り、薬を取りにナースステーションへ走ってくれました。

もうまさに、「私のことはいいから!ここは任せて、先に行って!」というアクション映画の名シーンさながらの構図です。

 

なんとか病室の外まで連れ出し、廊下を見渡すと息子さんの姿がありません。

おいおい、息子よ。このモンスターを放し飼いにしてどこに行ったのだい?と思っていたらどうやら電話をしていたらしく、通話可能エリアから出てきました。

「今すぐ、説明しろ!今どういう状況なんだ!」とまだ大声で怒鳴ります。

ちょうどそこへ、医長が病棟に来たためこれはチャンスとばかりに事情を説明し、別室で病状説明をしてもらいその間に延命処置をして事なきを得ました。

 

医療の現場は常にモンスターとの闘い

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命のやり取りをする医療の現場では常にこのモンスターたちとの戦いの場でもあります。しかしこのモンスターたちの対応に追われることで肝心の治療に支障をきたしてはならないのです。

一刻を争う状況であるにもかかわらず、こうしたモンスターが暴れるせいで医療者の手がそちらに使われてしまっては助かるものも助からなくなってしまいます。そして精神的に疲弊して辞めてしまう看護師も中にはいます。

私は幸いにも、親が厳しい親だったんで人に怒鳴られてもあまりビビりません。しかし、なかにはひとたび怒鳴り声を浴びせられると恐怖で足がすくんでしまう人もいます。こうした精神的ストレスに看護師は悩まされているのが現状です。

 

病気は治せて当たり前なのか

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病院は治療をする場所ですが、必ずしも病気を治せるとは限りません。いろんな治療法が確立していく中で、確かに今はがん=死という構図でもなくなってきて助かることも多くなってきました。しかしとは言え、治せるものと治せないものがあります。

 

医者は病気を治して当たり前。そう思われている方が少なからずいらっしゃるようですが、そうではありません。医者に出来ることは、病気を治す手伝いだけです。病気を治すのは結局最後は患者さん自身の力です。医者はその力を十分に発揮できるようサポートをしているに過ぎません。

 

そして私たち看護師は治療に取り組む患者さんの身の回りのお世話や治療や検査をスムーズに受けられるようサポートをすることが役目です。決して患者さんの召使ではありませんし、便利屋さんでもありません。

医療やそれに関わる医療者の役割や立場をしっかりと理解したうえで治療をしに病院に来てほしいと切に願っています。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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