私の妊娠ライフその6~それでも朝は来る~
こんにちは。天使ママのお部屋へようこそ。
今日は妊娠が継続出来ていればちょうど10カ月に入る37週と0日にあたります。双子だからさぞお腹は大きく苦しくなっていたんでしょうね。もしかしたらもう生んでいたかもしれません。
昨日の続きになるのでまだしばらく痛々しい記述が続きます。お付き合いいただける方はぜひ、お読みください。
救世主の登場
分娩台の下はすっかり血の海でした。痛みに耐えられず、叫んでいた朝6時。ようやく希望の朝がやってきました。そこに入ってきたのは主治医の先生ではないものの、何度か診察してもらったベテランの先生でした。その先生が入ってきた途端、空気が変わりました。私もすぐに気が付き、これで助かったと思いました。そこからはその先生の指示がばんばん飛びます。まず血圧を測定。そう、あとから思えば本当にびっくりでしたがあれだけ出血して私はもう目を開けることがほとんどできない状態だったにもかかわらず、誰も一度も血圧を測らなかったし心電図もつけていませんでした。初めて血圧を測って看護師が言いました。
「先生、血圧70です」
そりゃ死ぬわ。マジか。冷静にそう心の中で突っ込みました。これだけ一晩中叫び続けているにもかかわらず血圧70というのは本気でまずい状態でした。どうりで目もあけられないわけだ。そしてすぐに手術室に連絡するよう指示しています。やっぱり手術できるんじゃん。と心の中で思いました。更に輸血の指示を出しながら若い先生と交代してそのベテラン先生が私のお腹を押しながら中にも手を入れました。それが今までの若い先生とは比べ物にならないほど容赦なく力強い。途端に私は全力で叫びました。まだ私にこんな力が残っていたのかというくらいに全力で。母も主人も更に動揺しましたがベテラン先生は力を弱めることなく「これはどうしても必要なことなんです」と断言。私もこの先生なら任せられると思ったので「大丈夫、先生やってください。本当はそんなに痛くないんです。でももう疲れ果てて叫んじゃうんです!」って言ったのを覚えています。なんだか痛みにも慣れてきたというかバカになってきたというか本当は耐えられる痛みなんじゃないかと思えてきて、叫んでしまうのはもう頭のネジが2~3本吹っ飛んでるからなんじゃないかとかそんなことを考えていました。
最悪の宣告
そして看護師にこの人は体外受精だよねと確認していました。なぜ、今ここで体外受精が関係するのかと疑問に思いました。叫びながらも頭は冷静でした。不思議ですね。
「おそらくこれは癒着胎盤という状態です。そしてこれは体外受精で妊娠された方に起きやすい合併症です。採卵の時に子宮の中になんらかの傷ができてそこに胎盤が出来てしまうと癒着しやすくなるんです。」
これが先生の説明でした。おそらく、当直の若い先生は私が体外受精であることを把握していなかったか、把握していたとしても体外受精と癒着胎盤が結びついていなかったかだったのだろうと思います。癒着胎盤の対処法もちゃんとわかっていなかったかもしれません。延々とここで無理やり出そうとしても出血を増やすだけなので手術室で剥離を試みますと言われました。どうぞお願いしますという気持ちでした。そして最後に、最悪の一言がありました。
「もし、剥離が出来なかった場合、止血をするためには子宮を摘出する必要があります。」
一瞬にしてそばにいた二人が凍り付いたのが目を開けられない中でも感じ取ることが出来ました。不思議なものですね。伝わるんです。私は自分が決断しなくては駄目だと思いました。こんなことを二人に決断させては絶対に駄目だと思い、ほとんど反射的に「いいです。もしそうなったらとってください。」ときっぱり伝えました。
生きる約束
「あなた今自分が何を言ってるのかわかってるの?」
と母が聞きました。私が痛みと出血で意識が朦朧としてそんな戯言を言っていると思ったのでしょう。私の頭はクリアで目が開けられない分、聴覚が異様に研ぎ澄まされたみたいな状態でした。今母がどんな顔をしているのかも声でわかる気がしました。
「分かってるよ。大丈夫。もし子宮を取ってしまって子供が産めない体になったとしても私と彼ならやっていける。これから先、二人だけだって生きていけるから。」
そう私が言うと隣で私の手を握って主人が泣き崩れたのが分かりました。泣いている。一度も泣いたところなんて見たことがありませんでした。今も正確には見てはいませんがこんなにも全力で泣いている主人が隣にいるのが分かりました。
「大丈夫だよ。私はちゃんと帰ってくるから。約束したもんね。私は先に死なないって約束したから。私は絶対死なないよ。」
私の隣に顔をうずめて泣いている彼の頭を撫でながら言いました。子供をあやすような気持ちでした。結婚するときからずっと言い続けていました。私のほうが6歳年下ではありますが死ぬときは必ず主人が先に逝きたいと。1秒でもいいから自分より長生きしてほしいと事あるごとに主人は言っていました。だから私がここで死ぬわけにはいかない。双子がいなくなってしまった今、私が生きなければこの人は生きられない。だとしたら、何が何でも子宮を残して次の妊娠を望むよりとにかく生き続けることが最優先だと覚悟しました。
手術中の選択
そこへ私の主治医もやってきました。声が聞こえて少しだけ目を開けるとそばに立っていました。これほどの安堵感はありません。朝7時、先生は駆けつけてくれました。後から聞いた話ですが主治医の先生は部屋に入るなり一瞬固まってまずタオルで分娩台の下の血だまりを拭きそのタオルの重さを量るように指示していたそうです。出血量の把握が全くできていなかったのです。最終的に私はおよそ3リットル近く出血していたそうです。はっきり言って死にます。輸血はまだできないのかと先生が看護師に聞きました。今クロスマッチ検査をしているとの返答。クロスマッチとは患者の血液と輸血する血液を混ぜて拒否反応が起きないかを検査するものですが命の危機に関わる緊急時にはこの検査をやらなくても輸血はできます。何をちんたらクロスマッチなんぞやっとるんじゃい!と心の中でまたも私はお怒りでしたが怒る気力がないのとTHE日本人の私はこんな時でも本音と建て前をしっかり使い分けます。先生も分かっていてクロスマッチはやらなくていいから緊急時だと伝えて早く持ってくるよう指示しています。それに合わせて「早く輸血持ってきてー!(建て前)」と叫んでいました。同業者って悲しいですね。
そうこうしている間に手術室の準備が整いました。移動用のストレッチャーに移す前に私の服がもう血まみれなのをみて主治医の先生は服を脱がせました。正直、それ麻酔掛けてからやってもらえませんかとも思いましたが仕方がありません。右に左にごろごろと寝返りを打たされなんとか服を脱がされ、素っ裸にタオルケット一枚掛けられまだ断続的に続く痛みに耐えながら手術室へと運ばれました。
手術中、主治医の先生が手術室の前で待っていた主人の元へ行ったそうです。
「胎盤は剥離することが出来ました。でももしかしたらまだそのかけらが残っている可能性があります。かけらが残っていた場合、再出血し命の危機になるかもしれません。子宮を今取って出血のリスクを回避するか、一旦子宮を残して経過をみてみるかどちらになさいますか」
主人は子宮を残す選択をしました。
今日も昨日に引き続き痛々しい記述ばかりで申し訳ありません。お付き合いいただきありがとうございます。
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