「殺人犯はそこにいる」を読んで
こんにちは。天使ママのお部屋へようこそ。
世の中、出版業界では村上春樹さんの新しい小説が出版されたということで大盛り上がりですね。
私はいわゆるハルキストではありません。
海辺のカフカ、ノルウェーの森、1Q84を読んでみましたがあまり刺さりませんでした。
そんな私が最近読んだ本をご紹介します。
これはなかなかの衝撃作でした。
目次
売り出し方にすごく強い思いを感じた
私が今日おススメする本
それがこちら
もうね、やられたなって感じだったんですよ。
この本どうやって店頭に並んでいたかというとこんなカバーが付いていました。
それがこちら
なんだこれ?ってなりませんか?
ちなみに裏にもびっしりと書かれているんです。
スマホだと読めませんかね?
一応ここに書かれていることを載せておきますね。
申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか思いつきませんでした。
だからこうしてタイトルを隠して売ることに決めました。
この本を読んで心を動かされない人はいないと、固く信じています。
500Pを超える本です。怯む気持ちは分かります。
小説ではありません。小説以外の本を買う習慣がない方にはただそれだけでもハードルが高いかもしれません。
それでも僕はこの本をあなたに読んでほしいのです。
これまで僕は3000冊以上の本を読んできました。その中でもこの本は少しでも多くの人に読んでほしいと心の底から思える一冊です。
この著者の生き様にあなたは度肝を抜かれそして感動させられるでしょう。こんなことができる人間がいるのかと心が熱くなることでしょう。僕らが生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう。知らないでは済まされない現実が、この作品では描かれています。あなたの常識は激しく揺さぶられることでしょう。あなたもこの作品と出会ってほしい。そう切に願っています。ここまで読んでくれた方。それだけで感謝に値します。本当にありがとうございます。
ということが書かれているカバーがかけられた文庫Xとして店頭に山積みされていました。ちゃんと見れば赤字で本のタイトル書いてあるんで文庫Xでもないんですけどね。
もうこれは挑戦状だなと思ったわけです。
私は普段小説以外読まないのでハードルが高いらしいです。でもそれでも読めと。絶対度肝を抜かれるし感動するし心が熱くなるんだと。キャッチーな言葉を並べ立てて形振り構わず絶対に売ってやるんだ、読んでもらうんだっていう強い気持ちが伝わってきた気がしました。
私はいつも作家の名前で本を選びません。ほとんどジャケ買いみたいな感じでタイトルと裏に書いてあるあらすじで読むか読まないかを決めます。その基準から言ったらここまで興味をそそるジャケットもそうそうありません。
ほほう。そこまで言うなら読んでやろうじゃないの。売られた喧嘩は高く買うみたいな気持ちになぜかなって購入いたしました。
あらすじ
この本に書いてあることはフィクションではない、小説ではなく事実だということが前置きされています。そう前置きしなくてはならないほど小説の世界であってほしいと願わずにはいられない内容がそこには書かれていました。
5人の少女が群馬県と栃木県の県境のあちこちで行方不明になったり殺されて変わり果てた姿となって発見されたという痛ましい事件。この事件をある一人の記者が取材を何年も続け、辿り着いた真実と現実についての話です。
5件の事件には類似する点があり、半径10キロ圏内で起きている。
でもこの事件の連続性は否定され続け、闇に葬られようとしている。
たった一人の日本テレビの記者がそのことに気づき、何年もかけて取材し、報道し続け、このうちの一件の事件で逮捕起訴され、無期懲役刑が言い渡されていた方の冤罪の可能性を導き出し、見事に裁判所を動かし冤罪が認められた。
これでめでたしではない。これはあくまでスタートラインだ。
どこかにまだ真犯人がいる。しかもこの記者はその真犯人にも辿り着いた。それなのに、逮捕されない。いまだに。
それはなぜか。そこにもまた都合の悪い事実が邪魔をしているのではないか。
読んでみての感想
はっきり言って、この本を読んで法治国家日本に絶望しか抱けません。
警察の、検察の、裁判所の大事な大事な面子を守るために都合の悪い事実はすべて闇に葬る。簡単に嘘をつく。
DNA鑑定って素人がもっているイメージだと完璧だなって思いますよね。
でも初期のころのDNA鑑定の危うさったら本当に。それを絶対だってろくに鑑定の方法も意味も理解していない人間が水戸黄門の印籠みたいに使って犯人だと決めつける。無知ほど恐ろしいものはないってことです。
あろうことか、裁判所に証拠として鑑定結果を提出するときに都合の悪い部分をカットして一部分だけをさも全部であるかのように提出し、しかもそれが普通に証拠として認められるなんて。
テレビドラマか映画の中の話だけにしてほしいことが満載。
しかももっとおそろしいことに、別件でやはりDNA鑑定が決め手で死刑囚になった方もその鑑定方法が今回のものと同じで証拠としての力が弱いということになるのに既にその死刑は執行されているとか。
もしかしたら冤罪で罪のない人が国によって殺されたかもしれないなんて。
私は死刑がいいとも悪いとも言う気はないですがもし間違った人が死刑になるくらいならそんな裁きしか裁判所が出来ないのであれば廃止すべきと思いました。
先日から話題になっている大学生の歌手活動をしている女性を34か所刺して重傷を負わせた男はたったの14年の懲役が言い渡されました。14年後には社会に出てくるかもしれない、模範囚だったらもっと早いかもしれない。未遂だったと言っても34か所も刺しておいて未遂も何もあったもんじゃないと思うんですよね。そういう男は終身刑にすべきと私は思います。ですが、この本に書かれている殺人者とされていた人、殺人者として死刑が執行された人の証拠というのがあまりにも曖昧なものばかりでした。こんな曖昧な証拠でなぜこうも自信をもって有罪だと言えたのか。不思議でなりません。
冤罪が認められてもなお、「あいつはクロだ」と言う警官。その理由が先輩がそう言っていたからだと。
子供かお前はと言いたい。ママが言ってたから絶対だもんみたいなことだろうそれは。なぜみんな真実を見ようとしないのだろうか。
一人の人の人生を狂わせるかもしれない、命を奪ってしまうかもしれない。そんなとんでもないことになるんだから先輩がどういったとかではなく、ちゃんと事実関係を調べてどこからどうみても揺るがない証拠があって初めて「あいつはクロだ」と言うべきでしょう。
そんなこと、みんな常識だと思っているのに肝心の警官や検察官がそう思っていないなんて。驚愕の一言に尽きます。
メディアの力
テレビという大きな力を使って、新聞で、雑誌で、漫画で、ありとあらゆる手段を使って果ては国会で議論までされてそれでようやく動いた裁判所。そこまでして辿り着いたのは事件解決ではなく、事件を捜査しようというスタートライン。
無実の罪から解放されたのは本当に良かったと思いますがここまでして出来たことはそこまでで本当の意味での解決はなんらしていない。
こんなにメディアの力を総動員してもここまでしかできないなんて。本を読んだだけの私でもこんなにもどかしいのだから当事者のこの筆者の方にしてみたらこれ以上何しろって言うのよってくらいの焦燥感だろうと思います。
真犯人を単なる普通の記者がとてつもない努力と時間をかけて見つけたにもかかわらず、すでに執行された死刑が実は間違いだったということが明るみに出るのを恐れて本来犯人捜しをやるべき本家の警察が捜査しない。
この国はどこまで腐っているんだろう。そしてこの著者はそれでもなお、諦めることなくこうして著書を出版し、声高にこのことを伝えようとしている。
この本が出版された当初、いろんな人がこの本を取り上げてインターネットで紹介していたそうです。私も遅ればせながらご紹介したいと思いました。
こんなことが許されているなんて、絶対にあってはならないことだから。